「鈴木大拙の風韻」

（岡村美穂子 大谷大学非常勤講師）

“少しでも先生の関心を引きたい、と思った私は最後の講演の日、休息時間に先生が一人でおられるところを見計らって、英語でこう質問したのです。「先生。世の中にたくさんの宗教があるでしょう。だけど究極的には同じことを言っているんじゃないですか」…先生は、何とも言えない優しい顔をされて、遠いところを見るような眼差しで「ノー」、つまり「同じところには到達しないよ」とおっしゃったのです。…先生は続けて、「そうか。明日は土曜日だから学校は休みでしょう。よかったら3時のお茶に、わしのところにいらっしゃい。そうしたら説明してあげましょう」と言ってくださったのです。…とにかく恐れを知らない生意気盛りですから、…いつのまにか自分の日ごろの不満や悩みを率直に先生にぶつけていました。…すると先生は一言、「そうか」と頷かれ、私に「手を出してごらん」とおっしゃるのです。先生は私の手の広げながら、「きれいな手じゃないか、美穂子さん。仏の手だぞ…何でそんなにブツブツ言うのか」…前日に「ノー」とおっしゃったことの答えは直接には説明してくださいませんでしたが、先生から発せられる空気に触れて、その意味が何となく感じ取れる気がしたのです。“

大枠で言えば「同じ」ということはあっても、完全に一致するということは無いのですから、みんなが少しずつ合わせて一つの方向へ向かうということが大切なのだと思います。

社会的に良い悪い。現状として良い悪いはあったとしても、やり方も考え方も、人それぞれ少しずつ違い、どの考え方にも間違いはないのです。

人間は承認欲求の塊ですから、今の自分に拘ってしまいがちになりますが、重要なことは未来の自分がより良くなっていることです。

今の現状で自分にできるベストを尽くす。そのベストをより良いものに成長させておく。そして、イザというときにみんなの役に立つ。そうやって自己実現をしていくのです。

不平不満や愚痴と言うものは、自分の思い通りにならず、自分の心が満たされていない。納得できていない。ということです。

しかし、本当なら・・・自分になら・・・もっとうまく出来るハズだったという心の現れであり、自分の可能性を信じている一つの現象だと思います。

次はそんな思いをしなくて良いようにするには、前向きに行動しチャンスを掴み取るしかないのですし、大切なことはベストを尽くし未来をより良くすることです。

みんなでより良い考えを持ち寄り、みんながベストを尽くし、みんなに喜んでもらいたいですね。

今日もよりみんなの役に立てるよう、全力で感じて動いていきましょう。

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